Canal Field

身体の声を聞くとは。

「体の声を聞く」水泳哲学:楽に美しく泳ぐための本質

従来の指導法と体の声を聞く方法の違い

川崎氏が指摘する水泳指導の課題は、多くのスイマーが「正しい」フォームを追求するあまり、脳からの一方的な指令で体を動かそうとする点にあります。彼の哲学では、体が自然と選ぶ動きこそが、その人にとって最適な泳ぎ方だと考えます。

脳の指令による限界

「肘をこう曲げなさい」「足をこう蹴りなさい」という脳からの指示は:

  • 体の本来の動きを無視している
  • 自然な動作の流れを阻害する
  • 無理な動きを強制することで効率を下げる
  • 長続きしない(練習中は意識できても実際の泳ぎでは変化する)

体の声を聞くとは具体的に何か

川崎氏の言う「体の声を聞く」とは:

  1. 現在の自分の泳ぎ方をまず観察する
  2. 体が自然としている動きを尊重する
  3. 動きを強制せず、体が「行きたい方向」を感じ取る
  4. その上で、より良い動きが生まれる「環境」を整える

日常生活からの具体例

私たちは日常動作で既にこの原則を実践しています:

  • プールから上がるとき:無意識に最適な肘の角度や力の入れ方を体が選んでいる
  • ドアを開けるとき:「肘を何度に曲げる」という計算なしに自然に適切な動きができる
  • 走るとき:膝の曲げ角度を意識せず体が状況に応じた最適な動きを見つける

環境調整のアプローチ例

「キックを減らしたい」場合の考え方:

  • 「キックをするな」と命令するのではなく
  • なぜキックが多くなるのか(体のバランス、姿勢、呼吸のタイミングなど)を観察
  • 体が自然とキックを減らせる状況(姿勢の改善、体の使い方の変化)を作る
  • 結果として、命令なしに自然とキックが減っていく

肘の曲げ方の例

模範泳者の動きをただ真似るだけでは効果的でない理由:

  • 他人の肘の曲げ方をそのまま真似ても、自分の体の特性や感覚と合わない
  • 脳からの「こう曲げろ」という指示だけでは、水の抵抗を感じ取る繊細さが失われる
  • 代わりに、水をしっかり捉える感覚を大切にし、その結果として肘が自然と適切な角度になる環境を作る

実践のためのステップ

  1. まず自分の現在の泳ぎ方を観察し、体がどう動きたがっているかを感じる
  2. 体の各部位(腕、足、胴体など)がどう動きたいのかに注意を向ける
  3. 強制的な修正ではなく、より良い動きが自然と生まれる環境や条件を探る
  4. 水との関係性、体のバランス、リラックス状態を優先する
  5. 小さな変化を通じて体が自ら最適な動きを見つけられるよう導く

川崎氏の哲学は単なる泳法だけでなく、体と心の調和、そして自然との関わり方についての深い視点を提供しています。それは「正しい」フォームを外から強制するのではなく、内側から湧き出る自然な動きを尊重することで、より楽に、より美しく、より長く泳ぎ続けられる道を示しているのです。

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